「中古マンションを買って、壁を向いているキッチンをリビングが見渡せる対面式に変えたい」「お風呂を少しずらして、洗面室を広くしたい」……。リノベーションを検討する際、こうした水回りの移動を夢見る方は多いですよね。
しかし、いざ見積もりを取ってみると「えっ、移動するだけでこんなに高くなるの?」と驚かれるケースが少なくありません。実は、リノベーションにおいて水回りの移動は、もっとも費用が変動しやすく、かつ高額になりやすい項目の一つなのです。
今回は、なぜ水回りの移動にはお金がかかるのか、その仕組みと費用を賢く抑えるための考え方を、不動産実務の視点から丁寧にお伝えします。
なぜ「水回りの移動」は見積もりが高くなりやすいのか?
リノベーションの打ち合わせで「キッチンを3メートル横にずらしたい」と伝えたとき、担当者から「それだと追加で数十万円かかりますね」と言われた経験はありませんか?
読者の皆様の中には、「ただ設備を置く場所を変えるだけなのに、なぜそんなに高いの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。たとえば、八王子市内の築30年の中古マンションを購入し、今のローンの支払いに加えてリノベ費用を500万円以内に収めたいと考えている方にとって、水回りの移動による100万円単位の加算は死活問題かもしれません。
水回りの移動が高額になる最大の理由は、目に見える「設備(キッチンや浴槽)」の代金ではなく、床の下に隠れている「配管」の工事が複雑になるからです。
水回りの位置を変えるために必要な「見えない工事」の仕組み
水回りを移動させるには、給水(きれいな水を入れる)、給湯(お湯を入れる)、排水(汚れた水を流す)、そして換気(空気を外に出す)のすべてのルートを作り直さなければなりません。
給排水管の「勾配(こうばい)」の問題
もっとも厄介なのが「排水」です。水は高いところから低いところへ流れますよね。これを「勾配(こうばい)」と呼びます。
マンションの場合、家全体の排水が集まる「PS(パイプスペース)」という縦の管が決まった場所にあります。キッチンやトイレをPSから遠ざけるほど、スムーズに水を流すために排水管に一定の角度(傾斜)をつけなければなりません。
距離が長くなればなるほど、スタート地点(キッチン側)を高く持ち上げる必要が出てきます。そうなると、床下の空間が足りなくなり、床全体を高く作り直さなければならなくなるのです。
床下の構造(二重床と直床の違い)
お住まいの、あるいは購入予定の物件が「二重床(にじゅうゆか)」か「直床(じかゆか)」かによっても、リノベの難易度と費用は大きく変わります。
| 構造の種類 | 特徴 | 水回りの移動 |
| :— | :— | :— |
| 二重床 | コンクリートの床(スラブ)の上に支持脚を立てて床を作る構造。 | 床下に空間があるため、比較的配管を動かしやすい。 |
| 直床 | コンクリートの上に直接、クッション材付きのフローリングなどを貼る構造。 | 床下に隙間がないため、配管を動かすには床を一段高くする必要がある。 |
たとえば、多摩ニュータウン周辺の少し古い大規模団地などでは、直床構造が多く見られます。こうした物件で「どうしてもキッチンを窓際に移動したい」という場合、キッチン部分だけ床を一段高くする(ステップアップ)か、部屋全体の床を底上げする大規模な大工工事が必要になり、その分費用が膨らんでしまいます。
費用を抑えつつ理想の間取りに近づけるための3つの視点
「予算は限られているけれど、どうしても今の使いにくい水回りを変えたい」という方に向けて、コストパフォーマンスを高めるための実務的なアドバイスをまとめました。
たとえば、リノベ予算が総額800万円で、そのうち200万円を将来のお子様の教育費として残しておきたいと考えているなら、以下のポイントを意識してみてください。
1. 「PS(パイプスペース)」からの距離を意識する
もっとも費用を抑えられるのは「今の位置から大きく動かさない」ことです。どうしても移動したい場合は、排水の縦管が通っている「PS」の近くで配置を検討しましょう。
- キッチンの向きを「壁付け」から「対面」に変えるだけにする(位置は変えない)
- 排水管が通るルートを最短にし、床を壊す範囲を最小限にする
これだけでも、床の全面改修を避けられるため、数十万円単位で費用が変わることがあります。
2. 床を上げる「段差」を許容する
「部屋全体の床を上げる予算はないけれど、どうしても水回りを移動したい」という場合は、キッチンや浴室の入り口に一段の段差ができることを許容するのも一つの手です。
配管を通すために必要な高さだけ、そのエリアの床を高くする手法です。最近では、この段差をあえて「デザイン」として捉え、タイルを貼ってステージのように演出するリノベーションも人気です。バリアフリーという点では注意が必要ですが、コストを抑える有効な手段になります。
3. 設備のグレードと移動の優先順位を整理する
リノベ費用を抑える際、多くの人は「キッチンのグレードを下げる(安い製品にする)」ことを考えがちです。しかし、実は「移動をやめて、その分良い設備を入れる」ほうが、満足度が高くなるケースもあります。
- パターンA: 100万円かけてキッチンを窓際に移動し、本体は最低ランクの製品にする
- パターンB: キッチンは今の位置のまま、100万円かけて最新の海外製食洗機や高級天板の製品を入れる
どちらが毎日の料理を楽しくしてくれるか、ご自身のライフスタイルと照らし合わせて考えてみてください。
まとめ:賢いリノベで理想の住まいを
水回りの移動は、単なる「場所の変更」ではなく、床下の構造や配管ルートの再設計を伴う大きな工事です。特にマンションでは建物の構造(勾配や床下の高さ)という制限があるため、無理に移動させようとすると費用が跳ね上がってしまいます。
まずは「なぜ移動したいのか」という目的を整理し、プロの設計者や不動産会社と一緒に、構造上の制約を確認することから始めましょう。
センチュリー21ココカラでは、八王子・多摩エリアの物件特性を熟知したスタッフが、物件探しからリノベーションの費用バランスまでトータルでアドバイスいたします。「この物件、水回りは動かせる?」「予算内でどこまでできる?」といった疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。